※プログラムは変更になることがございます。あらかじめご了承ください。
プロト・シアター(東京・高田馬場)
TEL. 03-3368-0490
東京都新宿区高田馬場3-38-3 〒169-0075
■ JR山手線・東京メトロ東西線・西武新宿線「高田馬場駅」より徒歩12分。
■ 西武新宿線「下落合駅」徒歩7分。
チケット予約・お問い合わせは、下記のメールでお願いします。
(イベントチラシから転載)
小山博人没後4年近くが経過します。小山博人は、70年代後半〜80年代にかけてイヴェントアクシデントを名乗り、明治大学で開催されていたフリーミュージックスペースを始めとしたアンダーグラウンドな音楽イベントに出演して奇妙なサウンドパフォーマンスのようなことを行ったり、「音楽の終わりへ、作家、作品、演奏会を解体する作業を始めよう……誰でもその場で演奏に参加できる音の集会」と題した「SOUND YARD」というイベントを企画してみたり、ときには「第五列」というグループの一員で、あるいはイヴェントアクシデント名義で吉祥寺マイナーなどでの即興演奏のライブに出没し、また、フィールドレコーディングや「Man-MachineII」といったタイトルの電子音をカセットテープとして発表したりしました。90年代に入ると、当時の演劇ムーブメントである絶対演劇にコミットし、上演後のシンポジウムの司会をしたり、評論の執筆をしました。その後も、普段は図書館員として働きながら、そこに公立図書館としては破格の、現代音楽や様々なマイナー音楽のマニアックなCDライブラリーを築き上げ、またユニークな演奏者を招いての館内コンサートを企画しました。
しかしながら、このような形で彼の活動を列挙していっても、つまり確定記述の束をいくら積み上げたところで、小山博人という存在の特異性に辿り着くのは難しいことでしょう。
彼の本領は、表立った何らかの表現活動よりもむしろ座談において発揮されたと言っても過言ではありません。それは公演後の打ち上げの席を始め、毎年自ら主催した花見の宴や夏の保養地、新年会の際などに顕著でした。
彼は哲学や音楽、文学を中心に、美術、演劇、舞踏、パフォーマンス等々、漫画に至るまでの幅広い見識と審美眼、そして歓待と度量の広さで、酒を酌み交わしながら来るものを議論の渦に巻き込み、歯に衣着せぬ批評とユーモアで豊かな場を創出しました。
彼は自らをディレッタントと称していたようです。つまりそれは、様々な表現の現場に足繁く通い、立ち会いながら、あえて自分の立ち位置をアマチュアにとどめることで、アカデミズムや権威、商業主義とも無縁の、誰におもねることもない場所から、またいわゆる表現者でも批評家でもないところの境位から、あのひょうひょうとした風貌と一筋縄ではいかない語り口でわれわれの思考を撹拌し、触発し、鼓舞し、揺さぶり続けてきたのだと言えなくはないでしょうか。
そのような小山博人とはいったい何ものだったのか。
今回、彼の残した決して数多くはない文章や記録から、また彼と交流のあった方々の記憶と証言及び論考や新たな表現行為も含めて、改めて小山博人という運動体の軌跡を掘り起こし、辿り直す試み、あるいはそれらを再構築する機会として、二つの“場”を企画しました。ひとつが彼の遺稿集の編纂、そしてもうひとつがこのイベントということになります。
小山博人という名のもとに結集しつつ、小山博人という同一性を検証することではなくむしろ、そこに穴を穿ち、隙を衝いて攪乱し、今度はこちらから揺さぶりをかけること。それがこのイベントの企図するところです。
参加者あるいは観客は、それぞれが異なった経路と振幅を持って小山博人の名を反復することでしょう。そのときわれわれは、身体の組成を組み換え、部分的に小山博人になる。それはわれわれの未だ知らない小山博人の分身であるに違いありません。
そしてふと、図らずも訪れるもの、果たしてそれがかれの幽霊ではないと言い切ることができるでしょうか。
遠藤寿彦
■編集:新﨑博昭+入間川正美+遠藤寿彦 ■制作進行:湯田康
■デザイン協力:斉木耀 ■編集協力:GESO ■協力:狩野正幸、園田佐登志、大場ひろみ
■寄稿など
山口嘉民、金野Onnyk吉晃、Setz Inoue、島田一、狩野正幸、新﨑博昭、多田正美、鈴木健雄、小林保夫、井澤賢隆、荒井真一、芳仲和彦、大熊ワタル、大場ひろみ、山田和夫、野口是人、常松伸一、大川健、藤井博通、海上宏美、竹田賢一、園田佐登志